研究概要 |
未受精卵および受精卵の簡易で生存性の高い凍結融解法の研究開発と安全性の確立を目指して基礎的検討を行った。1.未受精卵、受精卵の各種凍結法後の発生学的ならびに形態学的な比較検討をマウスを用いて行った。未受精卵においては、凍結融解後の受精率を、受精卵においては、胚発生出を各種凍結融解法で比較した。その結果、未受精卵と受精卵では至適な凍結法、希釈法、融解法の条件が異ることが明らかになった。すなわち、未受精卵においては、耐凍剤として1.5M,DMSO+0.25M.sucroseを用い、希釈法は5ーstep sucrose dilatationを行ったものが最も生存率が高かった。受精卵において、耐凍剤として10%Glycerol+0.25M.sucroseを用い希釈法は1ーstep sucrose dilatationを行ったものが最も生存率が高かった。2.凍結融解後の細胞障害に関与する因子として、ス-パ-オキサイドアニオン(O^<2->)、ハイドロキシパ-オキサイド(H_2O_2)などの活性酸素が関与している。この活性酸素の卵に卵巣内卵に対する影響を基礎的に検討するため、ス-パ-オキサイドを分解するSuperoxide Dismutase (SOD)に着目した。すなわち、過非卵処置ラットにCu,ZnーSODとして、purified recombinant humman SOD,MnーSODとしてPolyethylene glycol SODの投与を行ったところ、排卵は有意に抑制された。そのためラットのCuーZnーSOD,MnーSODに対するポリクロ-ナル抗体を作成し、卵巣における局在を各性周期において検討した。排卵周辺期において、CuZnーSODは顆粒膜細胞、特に卵子を中心とした卵丘細胞に局在が認められ、一方、MnーSODは外英膜細胞に認められた。又、ヒトMnーSODに対するモノクロ-ナル抗体を作成し、ヒト卵巣組織における局在を免疫組織化学的に検討したところ、悪性上皮性卵巣腫瘍に局在を認めた。 以上の成績から、排卵、卵の生存性には活性酸素一抗酸化酵素系が精緻に作用しており、未受精卵の凍結保存には、この系を破壊することのない凍結融解法の必要性を明らかにした。
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