研究概要 |
〔研究目的〕女性スポ-ツの高度化に伴い、一流女子選手では初経発来の遅延傾向や続発性無月経などの各種月経異常が多いことが注目されている。我々は、これら月経異常の発現機転としてスポ-ツ活動時のprolactinの分泌亢進が重要な要因であると考えている。そこで、このprolactinの分泌亢進機構の解明を目的とした。 〔研究方法〕1.女子運動選手5名に基礎体温(BBT)を測定させ、卵胞期(月経周期第5〜8日)に自転車エルゴメ-タ-を用いる最大運動負荷試験を、L-Dopa投与の有無により2回実施した。2.対象群(C群)は、安静臥床1時間後(Rest)、運動負荷試験中は心拍数150bpm時(Submax)と最大運動負荷時(Max)、さらに運動負荷試験終了1時間の安静臥床後(Rec)に採決を行った。L-Dopa負荷群(D群)では、1時間の安静臥床後にL-Dopa 50mgを静注し、30分の安静臥床後に採決し(A30)、運動負荷試験を行った。3.血清中prolactin、血漿中dopamine(DA),β-endorphin(β-EP),vasoactive intestinal peptide(VIP)を測定した。 〔成績〕1.DAは運動負荷試験中に変動を示さないが、L-Dopa負荷後のD群は何れの時点においてもC群より明らかに高値を示した。2.β-EPは運動負荷試験中は明らかな上昇を示すが、両群間に差は認められなかった。3.VIPも運動負荷試験中は明らかな上昇を示すが、両群間に差は認められなかった。4.prolactinはC群では著明に上昇したが、L-Dopa負荷(D群)により明らかに抑制された。 〔結論〕L-Dopaは、スポ-ツ活動時のβ-EPやVIPには何らの影響も及ぼさないが、DAの著明な上昇を来し、その結果としてprolactinの上昇を明らかに抑制することが示された。これら成績より、dopamine製剤投与による女子スポ-ツ選手の月経異常発現の予防・治療効果が示唆され、それらに関する今後の詳細な検討が必要である。
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