研究概要 |
(1)ヒトembryonal carcinoma培養株であるNEC14は、HMBA(10^<-2>M)存在下で培養すると形態的に明らかな分化を示した。 HMBA添加後、経時的に細胞表面抗原の変化をFACSで解析したところ、SSEA-3、human Thy-1抗原が減少し、反対にSSEA-1、HLA-A,B,C,抗原が発現した。しかし、AFP、hCGなど胎児外性のマ-カ-物質は分化後も検出されなかった。 また、分化誘導後のNEC14細胞はヌ-ドマウスへの移植が著るしく低下した。更に最近このNEC14細胞は、HMBA処理でVimentinが強く誘導され、間葉系の細胞外基質であるテネンシンも増加することがわかり、今後この点につき詳細に検討を加える。 (2)Neuron-Specific enolase(NSE)が胚細胞腫瘍の診断に、腫瘍マ-カ-として使用できることを見い出した。 すなわち、胚細胞腫瘍患者血清(54例)をしらべたところ、未熟奇形腫(8例中4例)、Dysgerminoma(6例中5例)で、NSEが陽性を示し、診断的意義を認めた。更に9種の胚細胞腫瘍培養株、16種のコントロ-ル培養株で細胞抽出液および上清中のNSE量を測定したところ、胚細胞腫瘍では高値を示した。 また、血清中のNSEが高値を示した患者の摘出腫瘍にも、免疫組織学的にNSEを確認した。 NSE高値を示したヒトTeratocarcinoma由来のPA-1培養株は、in vitro spheroid培養で神経ロゼット様の配列を示し、未熟な神経外胚葉系の性格をもつことが明らかとなった。
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