研究概要 |
子宮頸部のヒトパピロ-マウイルス(HPV)感染に関して,正常子宮頸部,子宮頸部異形成,子宮頸部上皮内癌,子宮頸癌(浸潤癌)を次の2つの方法を用いて検討した。第1は子宮頸部からの剥離細胞を用いたfilter in situ hybridization法であり,第2は多型のHPVを検出できるconsensus primersを用いたPCR法(検体には,正常子宮頸部は剥離細胞を用い,他は生検検体を用いた。)である。 (1)Filter in situ hymidization法 666名の正常子宮頸部から,6名(0.9%)にHPV6/11,12名(1.8%)にHPV16,4名(0.6%)にHPV18が検出された。50未満では,5.7%のHPV感染率に対し,50才以上では0.9%とく,性ホルモンや性活動がHPV検出に影響していると考えられた。軽度・中等変異形成ではHPV16/18感染が24.3%に,高度異形成・上皮内癌では34.6%に,癌では48.4%に認められた。この方法により,正常子宮頸部(特に若年者)にもHPV感染が存在(不顕性感染)するが,子宮頸部のneoploomaに比べれば明らに低い感染率であることで示された。 (2)Consensus primerーmediated PCR法 HPV DNAのE6及びL1において,多型のHPVを同時に検出できる高感度PCR法を開発した。E6のPCRではHPV16,18,33,58を,L1のPCRではHPV6,11,16,18,31,33,42,52,58の9型を検出できる。これにより、正常子宮頸部ではHPV検出率が11%,異形成〜癌では90〜100%の検出が可能となった。異形成から癌へ,病変が高度になるにつれてHPV16/18が高率に検出された。子宮頸癌では66/69(96%)にHPVが検出され,16が53.6%,18が13.0%,31が2.8%,33が5.8%,52が5.8%,58が5.8%タイプ不明(9型以外)が8.7%に検出され,多くの型のHPVが子宮頸癌発生に関与している可能性が示された。
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