研究概要 |
前年度までの研究によって,GnーRHは顆粒膜細胞に作用しイノシト-ルリン脂質代謝を亢進すること,ならびにゴナドトロピンの効果を抑制することを明らかにしてきた。ところで,生体内ではGnーRHは視床下部からパルス状に分泌され,半減期は数分と極めて短い。従って,GnーRHが顆粒膜細胞に作用する際,継続した受容体の占有が必要であるか,あるいは受容体を一定時間活性化すると,中断後も以降の反応が連続して進行するのがどうかを検討することは,視床下部由来GnーRHの生理作用を知る上で重要である。 顆粒膜細胞を[^<32>P]リン酸の存在下でGnーRHとインキュペ-トするとイノシト-ルリン脂質への[^<32>P]リン酸の取り込みが亢進する。GnーRHの拮抗阻害剤であるアンタイドを加えて,GnーRH受容体からGnーRHを遊離させると直ちにイノシト-ルリン脂質のリン酸化が停止した。このインキュベ-ション中にGnーRHを再添加すると,イノシト-ルリン脂質のリン酸化が再びスタ-トした。つまり,GnーRHによるイノシト-ルリン脂質代謝の亢進作用は継続した受容体の占有が必須であることが示された。 GnーRHのゴナドトロピン拮抗作用も受容体の継続した占有を必要とした。GnーRHはゴナドトロピンによるアロマタ-ゼ活性化を阻害する。GnーRHをアンタイドによって中和すると,ゴナドトロビン単独の場合と同じレベルでアロマタ-ゼの活性化が生じた。ここに,GnーRHを再添加すると,GnーRHの抗ゴナドトロピン効果が再び発揮され,アロマタ-ゼ活性が抑制された。つまり,GnーRHが卵巣において作用を発揮するためには,GnーRHの受容体が継続して占有されることが必要である。 以上のことから,視床下部からのGnーRHが卵巣において生理的な役割を演じる可能性は低い。近年,卵巣組織中にGnーRH様ペプチドが検出されており,卵巣内でのショ-トフィ-ドバヅク機構が示唆される。
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