研究概要 |
ジエチルスチルベステロ-ルで予め刺激したラットの卵巣から調精した顆粒膜細胞を用いて以下の事項を明らかにした。 1)顆粒膜細胞にゴナドトロピン放出因子(GnーRH)の特異的受容体が存在する。 2)顆粒膜細胞をGnーRHで刺激すると,イノシト-ルリン脂質代謝が亢進し,ゴナドトロピンによるエストロゲン産生亢進が抑制された。 3)このエストロゲン産生の抑制はGnーRHがCーキナ-ゼを介してアロマタ-ゼ活性を阻害することに起因すると推測された。 4)顆粒膜細胞におけるGnーRHのイノシト-ルリン脂質代謝亢進作用は,エストラジオ-ルの存在下では非存在に比べ,約3倍に高ます。このことはエストロゲンがGnーRH作用の増強効果を有することを示すものである。イノシト-ルリン脂質代謝がアロマタ-ゼを抑制しエストロゲンの産生を規制していると考えると,エストロゲンは自己の産生をフィ-ドバックで調節していることが推測される。 5)GnーRHによるイノシト-ルリン脂質代謝の亢進作用ならびに抗ゴナドトロピン効果は継続した受容体の占有が必須であることが示された。 6)GnーRHが顆粒膜細胞に作用をおよぼす際,nMオ-ダ-の濃度と受容体の継続した占有が必要であること,ならびに視床下部由来GnーRHの動態を考慮すると,視床下部からのGnーRHが卵巣において生理的な役割を演じる可能性は低い。卵巣の組織中にGnーRH様のペプチドが検出されており,卵巣の機能調節にGnーRHがオ-トクリンあるいはパラクリン様に関与しているのかも知れない。
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