研究課題/領域番号 |
01570935
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小柳 孝司 九州大学, 医学部, 助教授 (30136452)
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研究分担者 |
佐藤 昌司 九州大学, 医学部, 助手 (00225947)
前田 博敬 九州大学, 医学部, 助手 (20199631)
中野 仁雄 九州大学, 医学部, 教授 (40038766)
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キーワード | ヒト胎児 Human fetus / 心拍数 Heart rate / 個体発生 Ontogeny / 確率密度図 Probability matrix / 折れ線回帰 Pieceーwise linear regression |
研究概要 |
ヒト胎児の一群の瞬時心拍数並びを個々の心拍数絶対値と変化分との双方の特性を損なうことなく相互の関連を確率密度図として記述し、これを用いて心拍数変動の妊娠の進行に伴う推移を定量的に解析することを目的に検討を加えた。妊娠20週から妊娠41週の正常発育を示すヒト胎児564例を対象に、個々の症例において90ー120分間の観察を通じて、総計7,810,572拍の心拍数情報を収集した。ついで、対象を妊娠週数2週毎に層化し、個々の層に含まれる症例を用いて心拍数絶対値と次の一拍への変化分とを行と列に、対応する行列の要素に累積度数を有するMatrixを求めた。さらに、このMatrixを全変動が1となるように基準化した後、外周から内に向かって累積確率の小さい方から大きい方へ順に等高線で結んで心拍数確率密度図を作成した。妊娠週数2週毎に区分された個々の群において、そこに含まれる全症例から求められた確率密度図を当該妊娠週群の心拍数全変動を表わすものとみなした。ここに、この全変動のなかから一様乱数を用いて、予め設定した個数の瞬時心拍数群を抽出し、標本確率密度図を作製した。そして、標本確率密度図を全変動を表わす確率密度図と比較して、相互の一致率が90%に達する心拍数最少数を求めた。これらの値を変量として用い、妊娠週数の進行にともなう心拍数確率密度図の推移を折線回帰(Pieceーwise linear regression)によって解析した。その結果、妊娠24ー25週と妊娠34ー35週の2つの時期に統計学的に有意な(p<0.05)変極点が存在することが分かった。このことはヒト胎児心拍数を制御する系の発達過程には妊娠24ー25週と妊娠34ー35週を臨界期とする互いに生物学的な意義を異にする機構が存在することを意味する。前後者は各々AccelerationとQuiet/Active phaseの出現に対応する事象である。このように確率密度図を用いて記述することによって、今後、一群の胎児心拍数を定量的に解析する諸種のモデルを構築することができる。
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