研究課題/領域番号 |
01570936
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊藤 昌春 熊本大学, 医学部, 講師 (10136731)
|
研究分担者 |
松井 和夫 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (50165742)
|
キーワード | 妊娠高血圧症 / 発症予知 / PROSTAGLANDIN / ANGIOTENSIN II / 血管反応性 / カルシウム / プロスタグラジン合成酵素阻害剤 |
研究概要 |
その病態が未だ明かではなく"学説の疾患"とも呼ばれる、妊娠中毒症は、産科診断学や治療学の発達した今日においても、妊産婦死亡原因や周産期死亡の主たる誘因である。我々は、予防こそが医学の根幹をなすと考え、本症の発症機序を明らかにする目的で、本学附属病院中央分娩部において、妊婦を対象にして発症に関する種々の因子を解析してきた。その結果、妊娠高血圧症妊婦(PIH)では高血圧が顕性化する1箇月以前より、昇圧剤(angiotensin II:A-II)に対する昇圧反応性が正常血圧妊婦にくらべて有意に亢進し、この変化はangiotensin sensitivity test(AST)で検出できる。即ち、ASTでPIHの発症を予知しうる可能性と、亢進した昇圧反応性を正常妊婦のlevelまで低下させることによってPIHの発症を予防しうる可能性があることを明らかにした。 妊婦家兎を用い、大動脈の血流を電磁血流計で測定しながら腎動脈分岐下1cmの部位で大動脈を狭窄し、子宮胎盤血流量を正常の60%に低下させた妊娠高血圧症モデル家兎を作製した。本モデル家兎の血圧は上昇し、angiotensin IIに対する昇圧反応性も亢進しており、胎仔には子宮内胎児発育遅延や子宮内胎児死亡がみられた。このモデル家兎にthromboane合成阻害剤であるOKY-046を投与すると、血圧は下がり、A-IIに対する昇圧反応性も鈍化し胎仔損失率も改善した。薬剤投与後、経時的に測定した血漿prostaglandins値より、PIH発症前に生じる昇圧反応性の亢進にprostaglanginsが深く関与していることを示唆する結果が得られた。また予知検査の一環として、高血圧と共に母体予後や胎児予後と正の相関をもつ蛋白尿に注目し、尿中蛋白微量定量法を用いたPIH発症予知検査を行なった。尿中微量蛋白定量は、PIH発症予知に関して高い非発症予知率を持っており、本法の臨床的な有用性については、平成2年度に検討を進める予定である。
|