研究概要 |
〔目的〕HTLVー1の母児感染での児のキャリア化は一様でなく,その一つの要因として母乳摂取期間が関与していると思われる。我々は母乳哺育を希望する場合は短期間の授乳を勧めているが,今回短期母乳哺育児を含めた栄養法別のHTLVー1感染リスクについて検討した。〔方法〕(1)確認試験陽性のものをキャリア妊婦とし,その出生児を追跡し栄養法別のHTLVー1抗体(抗体と略す)陽転率をみた。(2)キャリア妊婦の既に出産している同胞の抗体検索を行い,母乳摂取期間とキャリア化率を検討した。〔成績〕1987年7月よりのスクリ-ニング成績は,14537名中キャリア妊婦は780名(5.4%)であった。キャリア妊婦より出生し経過観察中の児は1990年12月31日現在570名で,人工栄養児466名,母乳哺育児の104名(混合栄養54名,凍結母乳2名を含む)である。1年以上経過例は,人工栄養児151名,母乳哺育児26名であり,そのうち23名が母乳摂取期間が平均2.5カ月の短期母乳哺育児である。抗体陽転率は人工栄養児9/151(6.0%),母乳哺育児2/26(7.7%),短期母乳哺育児1/23(4.3%)であった。次に児の同胞で1歳以上の母乳哺児228名の抗体陽転率と母乳摂取期間との関係は,母乳摂取期間7カ月未満では3/85(3.5%),7カ月以上では22/143(15.4%),で,両群の陽性率には有意差(p<0.01)が確められた。〔結論〕現在追跡中の短期母乳哺育児の抗体陽転率4.3%は7カ月以上母乳摂取児の15.4%に比べやはり低い傾向がみられた。(2)人工栄養児での抗体陽転率は6.0%であり,非母乳性のHTLVー1感染が示唆された。また短期母乳哺育児の抗体陽転率4.3%とは有意差がないことより,両者での感染リスクはあまり変わらないように思われる。
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