研究概要 |
平成元年度に得られた胞状奇胎組織は関連病院からの標本も含めて21検体になった。このうち無菌的に初代培養が可能であった9検体につき染色体分析を施行したところいずれも46,XXのホモ奇胎であった。患者は存続絨毛症として化学療法を施行したものが7例あったがいずれも寛解、現在二次管理中である。全例DNAの抽出は可能であっがmRNAの抽出は困難であった。18種類のorcogene probeを用いてこれらDNAについてSouthern blot hybridizationを施行したところoncogeneのDNA増幅や構造異常は一例も認めることは出来なかった。また夫白血球や正常絨毛についても同様の結果を得た。すなわち胞状奇胎の時点においてはoncogeneのDNAレベルの変化は認められないことが明らかとなった。しかし、まだわずかの症例であるので結論を得ることはできないので引き続きこの検索は次年度にも行なって症例数を積みあげる。一方絨毛癌細胞株についてはDNA、mRNAの抽出を完璧に行なうことが出来た。絨毛癌細胞株においてはchromosomeのaberrationは著明で、そのmodeはhypertriploid〜hypo-tetraploidにあるが、Southern blot hybridizationではoncogeneの増幅や構造異常は認められなかった。一方mRNAについてはfos,fms,sis,myc,N-mycの5種類が同時に3〜30倍のtranscnptional levelで増幅しているのが認められた。 こうした数種のoncogeneのexpressionが癌化の結果であるのか、そのようにexpressされたことが癌化につながったのかについてまでは、明らかにすることはまだできていない。得られたこれらのgenomic DNAが含んでいるoncogenesを切り出して、トランスフェクションの方法によって、activateされたものであるのかどうかを確認する作業を引き続きの研究線上でぜひとも行なって行きたいところである。1990年8月第15回国際癌学会(於ハンブルグ ドイツ)における招待演者に指名されたので以上の結果を発表する所存である。
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