研究概要 |
子宮頸癌病巣局所の免疫応答について,頚癌細胞上のMHCの発現状況や浸潤リンパ球サブセットの面から検討を行ったところ,一部の症例にクラスI抗原の減弱ないし消失が認められ,その腫瘍周囲にCD8陽性T細胞の浸潤が少ないことから,細胞障害性T細胞を介する免疫機構が障害されているものと思われた.また,一部にはクラスII抗原の新たな発現が見られ,その病巣周囲にはCD4陽性T細胞が多く浸潤していた.腫瘍内にはCD8陽性T細胞をTILとして認めており,このような症例では,頚癌細胞が宿主に対して自ら抗原提示を行い,TILの浸潤を招いている可能性が考えられた.以上から,頚癌病巣局所において宿主に有利な現象は,頚癌細胞上のクラスI抗原の保持,およびクラスII抗原の新たな発現であると考えられた.In vitroにおいて,IFNーγやTNFーαの添加による頚癌培養細胞上のクラスI,クラスII抗原の発現増強効果が明らかになったことから,in vivoでもリンホカインの投与により,頚癌細胞上のクラスIおよびクラスII抗原を増強せしめることにより免疫応答を強化しうる可能性を提示しえた.次に,MHCの発現と癌遺伝子増幅との関連性について検討したところ,頚癌においてもcーmyc遺伝子の増幅を認め,発癌過程ないしは癌進展に関与することが明らかとなったが,これらとクラスIおよびクラスII抗原の発現との間には有意な関連性が見られなかった.また,癌病巣局所へのリンパ球浸潤に必要であるとされる細胞間接着因子(ICAMー1)が,頚癌細胞や周囲間質に発現しており,発現の程度と浸潤リンパ球の多寡とに相関が見られたが,これはMHCとは独立して働くものと思われた.さらに頚癌細胞上に発現したICAMー1がリンホカイン(IFNーγやTNFーα)によって増強することから,接着因子の側面からも局所の免疫賦活療法の可能性が示唆された.
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