ヒトの生殖細胞の中から特に精子と胎盤のトロホブラストに表現される糖鎖抗原に付いて検討した。モノクロ-ナルを用いた実験からヒト精子及びトロホブラストには両者の間で糖鎖抗原が非常に似ていることが明らかになった。まずガングリオ系の糖鎖に付いては精子とトロホブラストにおいてシアル酸が先端のガラクト-スに2ー3位の位置で結合しているI抗原やi抗原が主たる糖鎖抗原である事が明らかとなった。特にこの内Sialyl i抗原が不妊患者のリンパ球から得られた精子不動化ヒト型モノクロ-ナル抗体H6ー3C4の精子上の対応抗原に成っている事が明かとなった。しかし大部分の精子不動化抗体をもつ不妊患者はこの抗原を認識しなかった。ガングリオ系の糖鎖以外にガラクト-スの第3位の炭素が硫酸基で置き換えられている3ーsulfogalactose基を持った糖が精子の上とトロホブラストに共通に存在する事が解った。精子の上には3ーsulfogalacose glycerolipid(seminolipid)でトロホブラスト上には同等の先端構造をもつ3ーsulfogalactose lactosyl ceramide(SM3)として表現している事が明かとなった。特に不妊患者の精子不動化抗体がこのseminolipidにより吸収される事が明らかになりこの糖鎖構造が不妊症に強く関連する事が示唆された。
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