ヒト聴器(側頭骨)病変の病理組織学的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570948
• 研究機関: 山梨医科大学
• 研究代表者: 村上 嘉彦 山梨医科大学, 医学部, 教授 (10166267)
• 研究分担者: 今村 まゆみ 山梨医科大学, 医学部, 助手 (00203331) ; 野沢 出 山梨医科大学, 医学部, 講師 (40172788)
• キーワード: 人側頭骨 / 形態学的観察 / 2次性悪性腫瘍 / 老人性難聴 / 中耳の炎症

研究概要

側頭骨検体収集は、各診療科、病理学教室の協力を得、順調に行われており現在約100症例の貴重な標本が収集されている。また標本作成も技術的にも時間的にもレベルが上がり病理組織学的な観察に充分耐え得る標本の作成が可能となった。収集された検体の臨床病歴としては、クモ膜下出血、脳挫傷、脳腫瘍等の脳神経外科領域の疾患、頭頚部腫瘍を中心とする耳鼻喉咽科の症例が多く、そのほか種々の部位の悪性腫瘍の症例であった。これらの検体の病理標本を詳細に検討しいくつかのテ-マを挙げ、検体を選び、臨床病歴、側頭骨病理所見の検討を続けている。
まずその一つとして、生前に臨床症状を認め耳科学的な検索を施行されている6例の2次性側頭骨悪性腫瘍の検体に付き検討した。自験症例を原発巣、臨床症状、及び側頭骨所見などよりその原発巣から側頭骨への到達の様式の相違に着目し3つの様式に分け、自験症例の側頭骨病理所見及び過去の文献報告例を詳細に検討した。この結果、原発腫瘍により浸潤様式に差があり、それぞれの様式において腫瘍により破壊され易い部位、その結果引き起こされ易い臨床症状があること、また逆に側頭骨内には解剖学的に腫瘍の浸潤に対しbarrierとなる部位の存在することなどを明らかにした。また中耳炎既往のある症例に注目し、中耳の炎症性疾患の種々の病態における側頭骨の病理組織学的特異性についても検討し報告した。そのほか聴器における加齢の変化についても着目し、臨床的変化、動物実験と併せて、ヒト側頭骨病理組織学的変化についても検討し報告した。上記以外にも種々の病態における側頭骨の形態学的変化として、呼吸器装着状態における変化、全身性の神経変化疾患、代謝疾患等における側頭骨の病理組織学的変化についても検討しており順次、報告する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 村上 嘉彦: "聴器と加齢ー老人性難聴(Presbycusis)" 山梨医大誌. 6. 83-90 (1991)
• [文献書誌] 今村 まゆみ,村上 嘉彦,野沢 出,今村 俊一: "聴性脳幹反応検査の臨床的研究" 山梨医大誌. 5. 201-208 (1990)
• [文献書誌] 今村 まゆみ,村上 嘉彦,野沢 出,今村 俊一: "ミトコンドリア脳筋症における聴力障害について" 臨床耳科. 17. 269 (1990)
• [文献書誌] 今村 まゆみ,村上 嘉彦,野沢 出,今村 俊一: "ミトコンドリア脳筋症における聴力障害について" 耳鼻咽喉科臨床. (1991)
• [文献書誌] 今村 まゆみ,村上 嘉彦,野沢 出,今村 俊一: "Kokayne症候群における聴力障害について" 耳鼻咽喉科臨床.
• [文献書誌] 今村 俊一,村上 嘉彦,今村 まゆみ,野沢 出: "びまん性転移性髄膜癌腫症の側頭骨病理所見" 耳鼻咽喉科臨床. 83. 355-861 (1990)
• [文献書誌] 今村 俊一,村上 嘉彦: "2次性側頭骨悪性腫瘍とその側頭骨病理" 目耳鼻会報. 94. 924-937 (1990)
• [文献書誌] 今村 俊一,村上 嘉彦,今村 まゆみ,野沢 出: "多彩な脳神経症状を呈した側頭骨軟骨肉腫症例" 臨床耳科. 17. 80-86 (1989)
• [文献書誌] 今村 俊一,村上 嘉彦,今村 まゆみ: "びまん性転移性髄膜癌腫症の側頭骨病理所見" Ear Res Jpn. 20. 285-286 (1990)
• [文献書誌] 今村 俊一,村上 嘉彦,今村 まゆみ,野沢 出: "ヒト側頭骨転移性腫瘍の病理組織学(2症例)" Ear Res Jpn. 21. 199-200 (1990)
• [文献書誌] 今村 俊一,村上 嘉彦,今村 まゆみ,野沢 出: "突発性難聴の治療成績" 耳鼻臨床. 84. 287-296 (1991)
• [文献書誌] 村上 嘉彦,荻野 純: "聴器の炎症性病変の病理組織学" 日本医事新報. No.3531. 37-40 (1991)