従来、血管条内電位測定を行う際は、蝸牛中央階骨にドリルで小孔を開けそこより、ガラス電極を刺入していた。しかし、このapproachの方法では、刺入前は、1μ以下の先端直径をもっている電極でも刺入後はほとんど数μの大きさになっており、このようなapproach法で得られた電位は信頼性に乏しい。われわれは、蝸牛骨胞をφ0.5mmの大きさで、リンパ液のもれがない状態でとりはずす方法を開発した。この方法で電極を刺入すると、電極先端は刺入前後で、1μ以下と変化がなく、また、電極抵抗も40〜50MΩで、刺入前後でほとんど変化しなかった。このapproachを用いて、血管条内の電位をtraceしたところ、血管条辺縁細胞内電位は、蝸牛中央階より、数mV低い電位であると推定された。さらに、本研究費で購入したシングルチャンネル細胞内記録用アンプ(ニュ-ロデ-タ社IR-183)を用いて、血管条内での電極入力抵抗を経時的に測定した。入力抵抗が、血管条に入ると、急激に低下することを利用して、血管条辺縁細胞内電位を調べたところ、やはり、辺縁細胞内電位は蝸牛中央階静止電位(EP)より数mV低いと推定された。次にアノキシア後の血管条辺縁細胞内電位の変化をみると、その変化は、コルチ器を破壊されたカナマイシン動物の蝸牛中央階静止電位(EP)の変化と酷似していた。この所見は、EPの成り立ちを考える上で、非常に興味深い所見である。 次に、先端直径1μ以下のNa^+またはK^+感受性二重電極を用いて、血管条内のイオン分析を調べた。K^+は蝸牛中央階に近づくにつれ上昇し、Na^+は逆のPatternをとることがわかった。特にEPの成立に重要なK^+は、中央階より数十mM低い値を示すことがわかった。
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