研究概要 |
血管条内のNa^+,K^+の分布勾配とアノキシア時のイオン変化および血管条内の電位変化について研究を行った。このために,まず,光端直径が1μm以下のNa^+,またはK^+感受性二重電極を作成した。血管条内のK^+は,血管条内リンパ側に向うにつれてその濃度が大きくなり,Na^+は逆のイオン勾配をもつことがわかった。また血管条内静止電位は,内リンパ側に向うにつれて段階状に正電位が大きくなり,血管条辺縁細胞と考えられる部位では,EP(蝸牛内リンパ静止電位)とほぼ同等の値になることがわかった。蝸牛内リンパのイオン濃度は,K^+が約130mM,Na^+は約1mMであった。アノキシア時には,内リンパK^+は低下し,Na^+は上昇するが,血管条内のNa^+,K^+も同様の変化を示した。EPの発生機序を知るのに,極めて重要なことは,血管条内辺縁細胞内のNa^+,K^+および細胞内電位の絶対値とそれらの内リンパ腔における値の相対的関係である。今まで得られた結果からは,辺縁細胞内では,内リンパ腔にくらべて,K^+はやや低く,Na^+はやや高く,静止電位は数mVEPより低い傾向がみられた。ただし,これらの値はバラツキが大きく,電投利入のアプロ-チ法に問題があると考えられ,内リンパ腔より血管条へのアプロ-チが必要であると考えられた。辺縁細胞内マ-キング法による細胞内電位同定を試みたが現時点では成功していない。
|