研究概要 |
1)酵素抗体法を用いたDot法によって、滲出性中耳炎患者の貯留液中にsurfactantアポ蛋白が存在することをみいだした。このsurfactantアポ蛋白は、Westernーblotting法から分子量80kDaであることが示唆された。 併せて、中耳貯留液中のリン脂質を酵素法にて定量検査した。その結果、肺surfactantの主成分であるDSPC(disaturated phosphatidyl choline)が中耳貯留液中にも存在することが見いだされた。 2)肺Surfactantアポ蛋白特異的モノクロ-ナル抗体(PCー6,PE10)を用いた免疫組織学的検索で、ヒト中耳粘膜の耳管開口部にsurfactant陽性細胞が存在し、粘膜上皮表層にも陽性所見がみられることが見いだされた。しかしGoblet細胞等の分泌細胞はこれらの抗体に反応しなかった。以上の結果から、中耳腔には肺胞II型細胞(surfactant分泌細胞)に類似した細胞が存在し、surfactant様物質を中耳腔に分泌していることが示唆された。 3)免疫学的定量法はsurfactantアポ蛋白微量定量法(同時二抗体免疫測定法)を応用して行い、中耳貯留液中のアポ蛋白を測定した。各貯留液の性状別分類ではserous typeがpurulent,mucoid typeよりアポ蛋白検出例が高いことが見いだされた。また、病態との関連性では、滲出性中耳炎の罹病期間が長くなるほど、surfactantアポ蛋白検出率が低くなる傾向も見られた。中耳貯留液中のDSPC量でも同様の傾向がみられた。 4)人工肺surfactant(サ-ファクテン^<【○!R】>)をモルモット中耳腔に注入し、中耳粘膜の反応性を検討した結果、サ-ファクテンが中耳炎の治癒を促進する可能性が示唆された。今後はサ-ファクテンの治癒への応用について継続的な研究を要すと思われる。
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