(1)スギ花粉予報におけるヒノキ科花粉の取り扱いについて;平成元年4月2日にヒノキ科花粉の飛散とともにスギ花粉症患者のなかに症状増悪を認めるものが出現した。ヒノキ科花粉の飛散終了とともに症状は軽快したが、過去8年間の空中花粉観測のなかで、スギとヒノキ科花粉飛散が求離したのは関西地方では始めての経験であった。平成2年春のスギ花粉予報にあたってヒノキ科花粉に注意して花粉予報をおこなったが、中等度の飛散量(スギ花粉)下において、平成元年度同様4月初旬にヒノキ科花粉飛散を認め、京都府立医大耳鼻咽喉科アレルギ-外来を受診した200名のスギ花粉症患者中45名(22.5%)に同時期に一致して症状が増悪したもが出現した。これら患者の臨床上の特微はヒノキ科花粉飛散ピ-クに一致して症状の増悪寛解を認めており、あたかも独立した花粉症の存在を示唆するものであったが、ヒノキ花粉エキス(奈良県立医大生化学井手武先生提供)のみに陽性を示すものは皆無であった。また平成元年度から開始したNTTテレフォンサ-ビスによるスギ花粉予報の呼数からみても、ヒノキ科花粉飛散期に急激な呼数の上昇を認めることから今後ともヒノキ科花粉に対する配慮が重要である。CAPシステムによるヒノキ科花粉ビャクシン属に対するスギ花粉症患者血清の陽性率は92%を示し、交叉抗原性の問題も含めて今後の検討が必要であり、本年(平成3年)ヒノキ科花粉の精製とCAPシステムによる吸収試験を試みる。なお、当初予定したスギ特異的免疫細胞群の解析は平成3年3月現在進行中であり、スギ花粉飛散状況との関係上最終結果は本年6月以降になる見込みである。
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