研究概要 |
頭頸部領域の悪性腫瘍に対して,さまざまな切除範囲を伴った手術がなされる。しかし術後の嚥下機能はしばしば障害され,患者は誤嚥に悩まされる。そこで切除範囲と術後の嚥下機能を検討した。 〔研究対象〕1981年から1990年の間に久留米大学耳鼻咽喉科において手術がなされた口腔癌43例と中咽頭癌55例である。その内訳は口腔癌では舌癌32例,口腔底癌11例であった。中咽頭癌では側壁型36例,前壁型10例,上壁型4例,後壁型5例である。 〔研究結果〕舌半切以上の手術がなされた口腔癌において,舌半切のみではなんとか普通食が食べられた。舌根を合併切除すると普通食を食べらるみのもあったが,主に粥食であった。舌を半分から3/4切除すると,粥食しか食べられなかった。舌根部を合併切除すると粥食または流動食であった。舌亜全摘あるいは全摘では,粥食または流動食であったが,舌根部を合併切除すると主に流動食しか食べられない。中咽頭癌の側壁型では,歯の問題や開口障害がなければ,側壁のみ切除しても普通食がなんとか食べられた。軟口蓋を1/2以上合併切除すると鼻咽腔閉鎖不全が問題となった。前壁型では誤嚥の問題がなければ普通食がなんとか食べられた。また誤嚥の程度は前壁の切除範囲のみならず側壁の合併切除の程度とも関係があった。上壁型ではプロテ-ゼを装置すれば鼻咽腔閉鎖不全が改善され,普通食が食べられた。後壁型では咽頭収縮筋を広く切除すると強い嚥下困難を来たすことがある。 〔結果〕頭頸部癌特に口腔癌および中咽癌術後の患者の嚥下機能を検討した結果,程度の差はあるが嚥下障害を来たす症例が多い事が判明した。今後本装置を用いてさらにそれぞれの嚥下動態をこまかく分析し,治療に役立たせたい。
|