平成元年度〜二年度科学研究費補助金により、超細径ファイバ-スコ-プビデオシステム(メディカルサイエンス社製FV2000)、および超細径観察用ファイバ-スコ-プを購入した。 第1の課題は、内視鏡システムによる導涙系の観察を行った。正常者、急性涙嚢炎、慢性涙嚢涙慢、鼻涙管閉塞症患者などにたいし涙嚢内壁・内腔、鼻涙管の直接的観察を行い報告した。以前には、生理的な・自然の状態での涙嚢内腔、鼻涙管の観察を行う事は不可能であり、国内外に未だ報告は見られていない。まず、涙点からファイバ-スコ-プを挿入し涙小管を経由しての涙嚢・鼻涙管観察に最適な観察用ファイバ-スコ-プの試作を行った。結果、直径0.62mm(観察用オブチカルファイバ-4000本)、観察用焦点距離1.0〜1.5mm、観察角度ま70度が最適であることが確認された。本研究で得られた結果を以下に示す。 1.正常者の涙嚢内腔は非常に狭く、自然の状態での観察は困難であり涙嚢内に生理食塩水を注入し、涙嚢を拡大することにより観察が可能となった。内腔は光沢のある淡紅色で、表面に細い血管が観察された。 2.急性涙嚢炎の炎症期では涙嚢内壁粘膜は発赤・充血しており、内腔には滲出物、点状出血斑が観察された。炎症消褪期には内壁粘膜はやや白色化しており、線維化が始まっていることが推測された。 3.慢性涙嚢炎・鼻涙管閉塞症患者の観察では、全例の涙嚢内壁粘膜上に線維性増殖物が、さらに2症例の涙嚢内腔には線維性膜様組織が観察された。また、ロ-ゼンミュ-ラ-弁の肥厚が認められた。 第2の目的は、眼窩病変に対する内視鏡的診断法の確立である。この目的に適したファイバ-チップを様々試作した。眼窩内には肥肪組織が充満しており、観察空間の確保が困難であり、残念ながら明瞭な画像が得られない。さらに試作開発を継続する予定である。
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