α_1受容体に現在最も高い選択性を持つ遮断剤である塩酸ブナゾシンを用いて、交換神経α_1作用の眼圧に及ぼす影響を明らかにし、さらにその緑内症治療薬としての臨床応用の可能性を検討した。 まず、正常白色家兎の片眼に塩酸ブナゾシン(0.01ー2.5%)を点眼すると、眼圧は両眼ともに下降し、実験眼では7時間持続した(p<0.01)最大眼圧下降率は0.01%で32.6%、0.1%で33.7%、0.5%で41.3%、1.0%で46.0%、2.5%で47.0%であった。対照眼での実験眼よりは少いが点眼前に比べて眼圧下降が認められた(p<0.01)。前房内FluoresceinーDextran直接注入法によるFluorophotometryでは、房水流量は両眼とも点眼後に増加していた(p<0.01)。圧トランスデュ-サを使用した両眼眼圧と血圧の継続的測定では、血圧は点眼により最高・最低ともに下降した。瞳孔径に変化はなかった。 つぎに、正常人の片眼に塩酸ブナゾシン水溶液(0.1%)を点眼したところ、眼圧は両眼とも点眼1時間後より下降し、点眼側では10時間後まで持続した(P<0.01)。最大眼圧下降は点眼後90〜120分に点眼側で5.0±1.5mmHg、他眼で3.5±1.8mmHgであった。血圧は最高・最低ともに下降した。前房深度は有意(p<0.01)に深くなり、瞳孔径は点眼側で有意に縮瞳した(p<0.01)。脈拍、屈折度には変化を認めなかった。房水流量には有意の変化はみられなかった。点眼により結膜の軽い充血を認めたが重大な副作用はなかった。 これらの成果は、塩酸ブナゾシン点眼が緑内障治療薬として臨床応用できる可能性が高いことを示している。今後は、塩酸ブナゾシンによる眼圧下降機序をさらに検討することにより眼圧制御における交換神経α_1作用の役割を解明していく計画である。
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