計画通りに角膜混濁の成因の研究をおこない2年間で得られた実験成績を以下に記述する。 1.幼若ラットの皮下にカプサイシン注射をおこなった投与群に起こる角膜混濁は、カプサイシン投与前後の6ーOHDA投与群に比較し、重度であった。 2.カプサイシン投与群と6ーOHDA投与群とのそれぞれの角膜混濁の臨床症状に応じ神経伝達物質あるいは修飾物質サブスタンスP(SPと略)の存在を間接蛍光抗体法で検索したところ、カプサイシンのみの投与群に比べて、6ーOHDA群ではSPの減少が少なかった。このことから角膜混濁にはSPの存在が大きく関与し、角膜神経線維の減少と一致していることが示唆された。 3.SPの定量を行ったところ、コントロ-ル群(5.80±2.43ng/g)に対して6ーOHDA投与群(4.13±0.18ng/g)であり、カプサイシン投与群(4.96±1.28ng/g)よりもSPの減少が有意に少なかった。 4.カプサイシンによる角膜混濁の発現時の混濁抑制にはノルエピネフィリンの減少が大きく関与していることが分かった。このことから臨床的な角膜混濁にはエピネフィリン、およびノルエピネフィリンが関与していることが示唆された。 5.臨床症状に応じて角膜上皮の核酸(DNA)の定性・定量をおこなったところカプサイシン投与後、角膜混濁の出現初期(投与後3週目)頃にtotal DNA合成が低下しており、神経線維の減少時期にほぼ一致していた。混濁の著明となる投与後4週目にtotal DNAを定量をおこなうと増加していることが分かった。基底細胞の核分裂が盛んとなる時期に一致しており、その後、抹消神経線維がどんどん発芽してくることが分かった。
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