研究概要 |
1.家兎in vivo ERGのPIおよびPIIを消去してslowPIIIを分離するためには,ヨ-ド酸ナトリウムおよびアスパルギン酸の,それぞれ30mg/kg静注および425mM溶液の0.1ml硝子体内注入が適当であることが確認された。この方法によって,網膜色素上皮由来のC波成分から網膜内層由来のslowPIII成分を分離し,それぞれの明・暗順応における波形変動を調べることが可能となった。 2.家兎のC波と,上記によって分離したslowPIIIの明・暗順応による振幅の変動を,10秒と0.25秒の持続時間の光刺激を用いて調査し,また,C波振幅の変動にslowPIIIの変動がいかに関連しているかを検討した。その結果、C波およびslowPIIIの発生にはいずれも、杆体のみならず錐体が関与し、暗所視性と明所視性の2元的機構が相互に作用し合ってC波が形成され、明・暗の状況によって波形が変化していることが明らかになった。 3.ヒヨコの摘出網膜に、網膜の神経伝達物質のうち、GABAあるいはグリシンを作用させると、その濃度によってC波は増大または減少した。GABAは特にC波のうちの早い成分(明所神性とされている)に強く影響を与えた。GABA,グリシンのそれぞれの拮抗薬であるピクロトキシン,ストリキニンの投与では、C波波形が大きく変化あるいは減弱し、特にC波のうち遅い成分(暗所視性とされている)が強く影響された。 以上の結果から、1)C波は網膜色素上皮の機能をよく反映する。2)しかし、C波発現のトリガ-となる視細胞のレベルで考えれば、C波には杆体のみならず錐体の機能も関与し、方法によっては、C波を介して錐体の機能をも知り得ることが判明した。3)更に、C波の発現に、網膜内層の神経細胞のフィ-ドバックが作用している可能性が示唆された。 以上の研究成果は、専門の学会で公表された。
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