網膜ニュ-ロンの軸索輸送障害時における細胞内物質の動態に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570982
• 研究機関: 北里大学
• 研究代表者: 若倉 雅登 北里大学, 医学部, 講師 (50137931)
• 研究分担者: 福島 一哉 北里大学, 医学部, 助手 (60199205) ; 山本 昇 北里大学, 看護学部, 教授 (10050543)
• キーワード: 網膜ニュ-ロン / 神経伝達物質 / 細胞内カルシウムイオン濃度 / カルシウム動員 / 4アミノピリジン / ミュ-ラ-細胞 / NCAM / 軸索輸送

研究概要

網膜ニュ-ロンの培養系において、まず購入した倒立型微分干渉装置付き双眼顕微鏡による観察が行われた。培養ニュ-ロンはネットワ-クを形成し、かつグロ-スコ-ンも存在した。ニュ-ロンやミュ-ラ-細胞と基質への関り方は検討中であるが、ニュ-ロンとミュ-ラ-と細胞との関り方をみるには解像力が十分とはいえなかった。そこでミュ-ラ-細胞と混合培養しない、新生児ラット網膜をラミニン塗布を施した培養系で、NCAMの発現の有無を確かめた。NCAMは培養1日目で一部のニュ-ロンで発現したが、3日以降には殆ど消失した。また予めNCAM抗体を加えて培養すると、ニュ-ロン同志はばらばらになる傾向を顕著に示した。すなわち、網膜細胞を培養系に移すと胎生期に発現することが知られているNCAMが発現し、再構築がはじまると考えられる。
さてこうして出来た培養ニュ-ロンがどれだけニュ-ロンとして性質を有しているかを調べる為に神経伝達物質が発現しているか否か、関節蛍光法を用いて検討した。その結果ド-パミン、サブスタンスP、γアミノブチル酸(GABA、アセチルコリンを発現しているものが多数認められ、既に検討済みのニュ-ロフィラメントペプタイドの発現と共に、培養ニュ-ロンが確かにニュ-ロンとしての性質を維持していることが確認された。しかし形態との対応は明らかでなかった。次に神経伝達物質の放出を、カルシウム依存性に促進するといわれる4アミノピリジンを用いて培養ニュ-ロン内のカルシウムの動態を細胞内カルシウム濃度解析装置を用いて検討した。現在までにニュ-ロンは15-40秒周期で細胞内カルシウム濃度を自動的に上下させていること、4アミノピリジン3-6mM以上の刺激によりニュ-ロン内カルシウム濃度が急激に上昇すること、この反応は細胞外カルシウムを除いても完全に消失せず、各括抗剤で一部、または完全抑制されることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Masato Wakakura,et al: "Laminin expressed by cultured Mu^^‥ller cells stimulates growth of retinal neurites" Experimental Eye Research. 48. 577-582 (1989)
• [文献書誌] Masato Wakakura,et al: "Response of cultured Mu^^‥ller cells to heat shock--An immunocytochemical study of heat shock and intermediate filament proteins in response to temperature elevation" Experimental Eye Research. 48. 337-350 (1989)
• [文献書誌] 若倉雅登: "細胞のストレス応答と眼" 日本眼科学会雑誌. 93. 511-523 (1989)
• [文献書誌] PGE Kennedy,M Wakakura,et al: "Herpes simplex virus type 1 infection upregulates stress protein expression in cultured retinal neurons" Journal of Neurology,Neurosurgery and Psychiatry. 53. 72-75 (1990)
• [文献書誌] Masato Wakakura,et al: "Effects of 4-aminopyridine on intracellular calcium concentration in neurotransmitter-containing retinal neurons in vitro" Investigative Ophthalmology and Visual Science.