研究概要 |
アミノアジピン酸のOー体,Lー体,D,Lー体の培養ミュ-ラ細胞と培養ニュ-ロンに対する作用が、細胞内カルシウムイオン動員系の分析により明らかにされた。即ちFura2AMを指示薬として、細胞内カルシウム濃度変化を細胞の発する蛍光濃度(実際には340nmと380nmの2種のフィルタ-で励起された蛍光濃度比,Argus100/CA使用)により推定する方法で、アミノアジピン酸の種々の濃度(0.06〜6.0mM)を加えたときの時間的変化を調べた。ミュ-ラ細胞の単独培養においてはLー体が最も低濃度(1.5mM)で細胞内カルシウム濃度上昇を惹起し、次いでD,Lー体,Dー体の順であった。網膜ニュ-ロンとの混合培養におけるミュ-ラ細胞も、概ね同様の傾向であったが、単独培養に比し細胞内カルシウム濃度上昇を示す細胞が減少した。一方培養網膜ニュ-ロンに関しては、Dー体,D,Lー体が最も低濃度(0.6mM)でも応答し、Lー体に応答する細胞は6.0mMでも限られていた。これらの応答は、カルシウムを除外しEGTAでカルシウムを遮断した液中の実験で、細胞外からのカルシウム流入が主な機序であると考えられた。ミュ-ラ細胞に対するLー体の強い作用は、過去の報告と一致したが、ニュ-ロンに対するDー体の作用は、Lー体が最も神経毒性があるらしいとする過去の研究成績からすると、若干予想外の結果であった。これに対する討論を含め、上記の研究結果を英論文にまとめ投稿中である。また前年度主に行ったD,Lーアミノアジピン酸の培養網膜細胞への比較的長期の影響に関する実験には、新たにこの時の細胞のDNA定量による結果を加え(アジピン酸によるDNA抑制なし)、論文をまとめつつある。又今年度は胎生チックにおけるbasic fibroblast growth factorの発想の様子を免疫細胞化学的に調べる実験も進行中である。
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