網膜神経節細胞純粋培養法を改良するために本年度もさらに実験を重ねた。まずPercollの密度勾配遠心法を改良を試みた。これまでは神経細胞の増殖旺盛なラット胎生14〜19日目の眼球を使用したが、網膜での細胞分化が完成していないと、密度勾配遠心法は応用できないので、20日以降の網膜を用いた。非直線状密度勾配(Percollで50%、40%、35%、30%)を使用し、分画I〜IIIに分離でき、分画Iには大型網膜神経細胞で網膜神経節細胞と考えれ、分画IIには中型網膜神経細胞で、分画IIIは小型網膜神経細胞で主に視細胞であった。大型や中型細胞は数日間確認できたが、小型細胞は維持できず、Muller細胞のみとなった。その後はどの分画でもMuller細胞がまだ多く混入してきた。したがって網膜神経節細胞の純度はなお低くかった。ついで、Panning法antiーthy1を用いた抗原抗体反応で網膜神経節細胞を得る方法である。しかしPanningを重ねる毎に細胞数が減少し、細胞数の収納は極めて悪い。したがって電気生理学的研究などための方法としては有用であるが、本研究の目的にはそぐわず、かつ高価格で経済的にも問題があった。そして、ShiosakaらのFilter Paperで網膜の各々の層ごとに採取する方法をも検討した。この方法でも細胞の採取率が悪く、ミエリン形成の研究や移植には問題が多く存在した。このように網膜神経節細胞の分離培養は密度勾配遠心法では細胞純度に、Panning法やFilter Paper法では得られる細胞数に問題があることが明らかになった。ミエリン形成に関しても継続して網膜組織片と稀突起膠細胞のcoーcultureを行い検討したが免疫組織化学的手法や電子顕微鏡を使用しているが、現段階では未だミエリンの形成を確認できなかった。
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