研究概要 |
口腔領域悪性腫瘍におけるヒトパピロ-マウイルス(HPV)の病因的意義を検討するために、分子生物学的手法および免疫組織学的手法を用いて、HPVゲノムDNAおよび抗原の検索を行っている。 1.PAP染色によるHPV抗原の検索 口腔悪性腫瘍組織98例についてパピロ-マウイルス共通抗体を用いてPAP染色を行った。コントロ-ルを併染して、技術レベルの確認を行った。結果は全例陰性であり、これらの症例ではウイルス粒子の生成は行われていないものと思われる。 子宮頸癌同様、口腔領域悪性腫瘍においてもPAP染色を用いて腫瘍中のHPV粒子を検索することは困難と思われる。今後、良性病変、前癌病変を含めて、さらに症例を増やし検討を重ねたい。 2.Southern blot法およびin situ hybridisation法によるHPV・DNAの検出 HPV1,6,11,16,18,33型をプロ-ブとして用い、low stringentおよびhigh stringentな条件でHPV・DNAの存否を検討した。コント-ルをおき感度を2-3copy/cell以下に保つように努めた。 口腔偏平上皮癌25例、良性腫瘍11例について、検討した結果、口腔偏平上皮癌5例(20%)、良性腫瘍0例(0%)の陽性率であった。これらの陽性例についてはウイルスゲノムが宿主DNAに組み込まれていたことが示唆されたが、型別を明らかにすることはできなかった。今後、口腔領域および周囲領域の悪性腫瘍、前癌病変についてさらに検討したい。
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