歯周組織は絶えず咬合の力や動きを吸収し、消耗を受けており、コラゲン線維の代謝・新生速度は極めて高く常に改造が行われている。これら生理的条件下では、改造現象は線維芽細胞によってなされていると考えられてきている。最近これらに加えて、歯の萌出や移動に伴う改造現象で、セメント芽細胞がコラゲン貪食能を持ち、造現象に関与している可能性が示唆されたので本研究を行い、以下の結果を得た。 材料には、灌流固定した生後3週から3箇月のウィスタ-系ラットの下顎第1臼歯の歯周靭帯-セメント質境界部組織を用いた。その微細構造とACPase活性の局在を電顕で観察し、比較検討した。 セメント芽細胞はセメント質表面にほぼ垂直に配列し、細胞小器官はセメント質側に局在していた。セメント芽細胞のなかには、コラゲン細線維を取り込んでいる像がしばしば観察された。これらの線維の他端はセメント質のシャ-ピ-線維に連続しているものも有った。また、細胞内コラゲン線維を持つセメント芽細胞も多数観察され、1本または数本のコラゲン線維が貪食小体中に認められた。これらの多くの小体にはACPase活性が認められ、コラゲン貪食水解小体であることが確認された。さらに、水解小体中でのコラゲンの変性・消化像も観察された。コラゲンを貪食しているセメトン芽細胞では粗面小胞体はやや拡張し、正常な分泌顆粒もなく、基質の分泌は抑制されていた。 以上の研究結果より、歯周靭帯-セメント質境界面では、従来考えられていた線維芽細胞に加えセメント芽細胞もコラゲン貪食能を持ち、生理的コラゲン改造機構に関与していることが明らかにできた。
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