歯周組織は絶えず咬合の力や動きを吸収し、消耗を受けており、コラゲン線維の代謝・新生速度は極めて高く常に改造が行われている。生理的条件下では、改造現象は線維芽細胞によってなされていると考えられてきているが、セメント芽細胞がコラゲン貧食能を持ち、改造現象に関与している可能性が示唆されたので本研究を行い、以下の結果を得た。 材料には、潅流固定した生後3週から6箇月のウィスタ-系ラットの下顎臼歯の歯周靭帯ーセメント質境界部組織を用いた。この微細構造とACPase・ALPase活性の局在を電顕で観察し、比較検討した。 セメント芽細胞はセメント質表面にほぼ垂直に配列し、細胞小器官はセメント質側に局在していた。セメント芽細胞のなかには、コラゲン細線維を取り込んでいる像がしばしば観察された。これらの線維の他端はセメント質のシャ-ピ-線維に連続しているものも有った。また、細胞内コラゲン線維を持つセメント芽細胞も多数観察され、1本または数本のコラゲン線維が貧食小体中に認められた。これらの多くの小体にはACPase活性が認められ、コラゲン貧食水解小体であることが確認された。さらに、水解小体中でのコラゲンの変性・消化像も観察された。また、ALPase活性が形成中のコラゲン貧食小体の限界膜に認められたが、貧食水解小体には観察されなかった。このALPaseは貧食小体膜の形成・分化に関与していることが示唆された。また、マラッセ上皮遺残細胞のコラゲン貧食像も観察された。これらの貧食作用はコラゲン改造機構よりむしろ、細胞の移動に伴うものと考えられた。 以上の研究結果より、歯周靭帯ーセメント質境界面では、従来考えられていた線維芽細胞に加えセメント芽細胞もコラゲン貧食能を持ち、生理的コラゲン改造機構に積極的に関与していることが明らかにできた。
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