研究概要 |
骨の代謝調節における骨芽細胞の様々な機能と骨芽細胞の分化との関係を明かにするために研究を行い、以下の成果が得られた。 1.新生児ラットの頭蓋冠から樹立した異なった分化段階の骨芽細胞様細胞株での骨Gla蛋白(BGP)およびマトリックスGla蛋白(MGP)遺伝子の発現を調べた。末分化な骨芽細胞様細胞であるC26および、より分化した骨芽細胞様細胞であるC11,C20,C23の各細胞を用いてノ-ザンブロットハイブリダイゼ-ョンを行った。これらすべての細胞でMGP遺伝子の発現が認められたがBGP遺伝子の発現は認められなかった。まタ活性型ビタミンDの投与でC26以外の細胞でMGP遺伝子の発現量が著明に増加した。 2.Genetics Institute社との共同研究で、骨形成因子のひとつであるBMPー2をC26細胞に投与すると、細胞は分化して骨芽細胞の形質が増強された。また、この細胞ではMGP遺伝子の発現量が減少する一方でBGP遺伝子の発現がみられるようになった。 3.ラットおよびマウスのMGPのcDNAをクロ-ニングした。マウスのMGPのcDNAははじめてクロ-ニングされたものであるため、全塩基配列を決定し、遺伝子バンクに登録した。 4.成熟ラットの骨組織で起こっているBGPおよびMGP遺伝子の発現を、独自に開発した、非脱灰骨組織のin situハイブリダイゼ-ション法で調べた。BGP遺伝子は、石灰化骨梁に沿って存在する立方形の骨芽細胞で強く発現していた。MGP遺伝子は、軟骨の肥大細胞以外では強い発現が認められなかった。この結果から、石灰化が乏しい新生児等の骨組織では、これらの遺伝子の発現状態が全く異なっている可能性が考えられた。
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