研究概要 |
(1)脂肪滴(TG)の分解産物の一つである長鎖脂肪酸(FA)は,界面下でいわゆるリン脂貭分子(PL)と同様に,ラメラ構造(MLS)を呈すること, (2)FAは酸性条件下(pH6.0)では,油滴状(OD)を呈し,アルカリ性条件下(pH7.0ー9.0)では,MLSを呈し,pHによる異なる相変化を呈する特徴が形態学的所見としてもとらえられた, (3)PLはpHによる相変化を示さず,従って形態学的には広いpH域でMLSを呈することなど,脂肪酸,リン脂貭純品とフリ-ズフラクチャ-法を用いた予備実験から確認された。上記の結果を踏えて,出生前後のICR系マウス頭頂骨を用い,MLS出現について電顕的に検索を行った。 滴出試料が直ちに酸性(pH6.0)に調整された固定液にて処置された場合,LD分解酵素であるhormone sensitive lipaseは作用しがたく,分解産物としてFAが生じることもないため,結果としてMLSは可視されてこない。また,既存のTGはそのまま細胞内ば観察されるはずである。以上の推察に対し,詳細に検索した結果,酸性条件でもMLSが細胞内・外に観察される場合がしばしばあった。前年度の報告にあるように,アルカリ性条件下でのインキュベ-トにより細胞内・外にMLSが多数出現した結果を考え合わせると,pH変化に依存しないMLSが存在することを意味し,pHーdependent MLS(脂肪酸と考えられる)と,pHーindependent MLS(ある種のリン脂貭と考えられる)の存在が示唆された。 いわゆるII型肺胞上皮で合成・分泌される肺サ-ファのタントと比べてその分泌様所見に相遇する頻度はきわめて少なかった。本研究におけるその機能的意義としては,細胞分化のためのエネルギ-源や類骨石灰化のための基貭の供給など考えられるが,推察の域を出ず本研究の中で明確化するまでには至らなかった。現在,in vitro系においてカルチャ-medium中の成分分析などひきつづいて検討中である。
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