研究概要 |
約1.7mMのβーグリセロリン酸カルシウム溶液にアルカリフォスファタ-ゼ(50Mg/ml)を、pH及びイオン強度が生体還境下に近い条件下で作用すると,約8時間に無機リン酸が約1.4mM産生され,アパタイトの前駆体が析出する。この実験系で,コラ-ゲン,オステオネクチン,グラ蛋白,象牙質リン蛋白などについて核形成能の有無を調べると,いずれの蛋白についても積極的な効果は認められず,逆に,各非コラ-ゲン性蛋白濃度に比例して核形成が阻害された。これらの結果より,溶液中に遊離する蛋白には,核形性能がないことが明らかとなった。次に,各非コラ-ゲン性蛋白とコラ-ゲンの架橋をし,蛋白の不動化を試み,上述と同様に核形成能実験をした。しかしながら,得られた結果は不動化をしなかった場合と本質的に同じであった。電顕観察でも,蛋白を架矯したコラ-ゲン線維上にアパチイトが析出しているという結果も得られなかった。極く微量の非コラ-ゲン性蛋白が残存すると上述したように,阻害効果を発現するため,架矯処理後の洗浄方法にも問題があった可能性も考えられた。本年度ではさらに、各非コラ-ゲン性蛋白をアガロ-スゲルに架矯し,不動化したものについても調べた。この研究では,通常の石灰化溶液ー準安定溶液及び安定溶液ーを用いた。象牙質リン蛋白及びフォスビチンの場合では,準安定溶液中で積極的な核形成能が認められ、安定溶液中でも、ある濃度範囲では核形成能が認められた。これらの結果は,蛋白の存在様式(遊離しているか、不動化されているか)が、核形成能を発現するのに極めて重要な要素であることを示唆している。今後さらに,蛋白の不動化を種々試み,石灰化の開始時における各硬組繊蛋白の役割について検討していきたい。
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