マウス主導管上皮の機能を考える目的で、以下の実験を行い、次の様な結果および今後の問題点を得たので、その概要を報告する。 1.雄性マウスの顎下腺主導管上皮は、3種類の細胞から構成されている。TypeIとTypeIIの細胞頂部にある小胞内と管腔中のamorphousな物質がムコ多糖類である事とTypeII細胞の核上部と核下部にある電子密度の高い果粒にムコ多糖類があるかどうか調べる為に物理現像法を用い糖質の検出を行った。ダイアモンドナイフは切片の作成に使用された。 TypeIとTypeIIの細胞頂部にある小胞と管腔中のamorphousな物質には反応は認められなかった。しかしTypeIIの細胞に見られる電子密度の高い果粒内には点状に反応が認められた。今後はこの糖がどういう性質か調べる為にレクチン法で免疫電顕的に調べる必要がある。 2.TypeIIに認められる電子密度の高い果粒が糖脂質であるかどうか調べるためにαナフト-ル法を用いて研究を行った。 αナフト-ル法で上皮内に反応が認められた。しかしこの方法だと濃硫酸を使用する為に切片が溶けた様になり写真を取る事が出来なかった。 3.TypeIの細胞には滑面小胞体が多く、lipidも観察され、ステロイド分泌細胞を思わせる。ステロイドが存在するかどうか調べる為に3αーHydroxysteroid反応を行ったが、上皮内に反応は認められなかった。精巣の組織を取り、positive controlの実験をやる必要がある。 4.雄性と雌性マウス主導管の形態に差があるか検索した。 雄性マウスTypeIIに認められる電子密度の高い果粒は、雌には認められず、雌マウス顎下腺主導管上皮は雄のそれと非常に異なっている事がわかった。雄のTypeIIに認められる電子密度の高い果粒がNGFとEGFと同じ様に男性ホルモンの影響下にあるかどうか研究する為に去勢等の実験を今後行う必要がある。
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