研究概要 |
1.ラット大脳皮質における神経ペプチド ニュ-ロテンシン,コレチストキニン,エンケファリン,ニュ-ロキニン,カルチリニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などのうち大脳皮質味覚野に存在するのはCGRPのみであった。CGRPは無顆粒性島皮質からさらにその背側の不全顆粒性島皮質の腹側半分にわたり,神経線維中に存在し,CGRPを含む細胞体は認められなかった。逆行性トレ-サ-とのニ重標識法とイボテン酸による脳局所破壊実験から,皮質味覚野にCGRP線維を送るのは視床味覚野のもっとも内側部の細胞であることが分った。 2.味刺激によるCGRPの変動 大脳皮質味覚野のCGRPは,動物がもっとも嫌悪するキニ-ネ溶液や,嫌悪条件づけにより強い拒否行動を示す溶液の刺激に対して有意に増加することが分った。 3.味覚嫌悪学習における大脳皮質味覚野の役割 大脳皮質味覚野を前もって破壊しておいても味覚嫌悪学習は可能であったが,学習獲得後の皮質破壊により条件づけ効果はすみやかに消失した。皮質味覚野は,過去に経験した味か初めての味かの判定に,また,嫌悪学習獲得時には条件刺激の味の記憶に重要な働きを演じる。 4.大脳皮質味覚野におけるCーfos蛋白質 以上のように,大脳皮質味覚野は味覚嫌悪学習に重要であることが分ったので,このとき,プロトオンコジ-ンであるCーfosによる蛋白質産生を免疫組織化学的に検索したところ,嫌悪条件獲得後,大脳皮質味覚野ニュ-ロンで顕著に認められた。この詳細な働きは今後解明すべき研究課題である。
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