研究概要 |
本申請研究は,マウス骨芽細胞株MC3T3ーE1での初期石灰化過程の分子機構の究明のために,蛍光色素法を用いて,(1)細胞内カルシウムイオンの存在様式の動態,(2)アシドホスファタ-ゼ・アルカリホスファタ-ゼの作動とカルシウムイオンのinfluxとの関連性,(3)ホルモン・成長因子などの刺激に対応したレセプタ-介在のカルシウムイオンのinflux機構,を研究する目的で施行された.初年度には,蛍光分光光度計を用いたFuraー2での細胞内カルシウムイオン濃度測定のための微量型測定セル(浮遊細胞系だけでなく吸着細胞系でも可能,カバ-グラス上に培養した細胞の表面をホルモン・成長因子などを含む試料液が流れるように工夫したフロ-型セル(内容量:0.1ml),蛍光分光光度計だけでなく蛍光顕微測光システム用の測定セルとしても使用可能)を開発した(生物物理29(Suppl.),S184,1989). 初年度〜二年度にかけて,まず,その微量測定セルのテストとして,ヒト上皮性癌細胞株A431に対する上皮成長因子(EGF)刺激とウシ胎児血清(FCS)刺激に応答して現れる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇パタ-ンを調べ,両者の刺激応答パタ-ンの違いを究明した.次に,培養開始後10日〜14日で細胞内カルシウムの有意な上昇が原子吸光法で観測できるマウス骨芽細胞株MC3T3ーE1での,培養開始後2日・4日・10日・20日・35日でのEGF刺激・FCS刺激応答に対する同様な実験を行ったが,A431でのような現象は観測できなかった(歯科基礎医学会誌32(補冊),243,1990).引続き,骨芽細胞とA431細胞でのこれらの蛍光測定の違いは,細胞の集合状態の違い(前者はコンフルエントな単層後にも重層的な増殖が可能であるに対して,後者では重層的な増殖は不可能)によるものか,どうかを検討してきた.
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