研究概要 |
血小板活性化因子(plateletーactivating factor,PAF)は炎症・免疫関連細胞から分泌され、炎症反応やアナフィラキシ-のリン脂質メディエ-タ-として重要な役割を果たしている。一方PAFは唾液腺或いは脳神経組織などにおいても産生され,外分泌反応や神経機能の調節因子として働いている等多彩な生理活性を有する可能性が示唆されている。本研究は刺激ー分泌反応におけるPAFの役割を明らかにすべく,副腎クロマフィン細胞及び唾液腺腺房細胞におけるPAF動態について検索し,以下の成績を得た。 1.ウシ培養クロマフィン細胞にアセチルコリン(ACh),30μMを適用することにより血小板活性化物質の産生が認められた。カルシウムイオノフォアであるionomycin 3μMによってもこの活性化物質の産生がみられた。 2.この物質はシリカゲル薄層クロマトグラフィ-,シリカ60カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ-による分離,アルカリメタノリシス或いはホスホリパ-ゼA_2処理による活性消失,しかる後アセチル化により活性の回復,ホスホリパ-ゼC処理による活性消,PAF受容体拮抗薬BN52021による血小板活性化作用の拮抗等の諸性質によりPAF或いはその類似体であることが示唆された。イヌ顎下腺細胞においても同様にPAFの産生が認められた。 3.産生されたPAFは細胞外に遊出せず,細胞内に貯留していた。 4.LysoーPAFーAcetyl CoAアセチルトランスフェラ-ゼ活性は,ACh適用後短時間に著しく上昇した。この活性の上昇は外液Ca^<2+>を除去することにより減少したが、完全には消失しなかった。一方DTTーinsensitive cholinephosphotransferase活性はAChにより活性化され,外液Ca^<2+>除去により影響されないか,むしろ促進された。
|