研究概要 |
細胞外ATPの褐色細胞腫PC12細胞に対する効果,およびこの細胞への神経成長因子の作用に対する効果についてPC12細胞のサブクロ-ンの一つであるPC12h細胞を用いて検討し,以下の結果を得た. 1.ATPは細胞内Ca^<2+>イオン濃度を上昇させる.このCa^<2+>上昇は細胞外液のCa^<2+>のinflux(60〜80%)と細胞内貯蔵Ca^<2+>のmobolization(20〜40%)との両者によるものである.この両者の間での比率については細胞の密度,細胞分化の程度,その他未同定の要因によって変化する. 2.各種ヌクレオチドおよびATPアナログを用いた細胞内Ca^<2+>上昇についての実験結果は,ATPによるCa^<2+>influxはP_2プリナ-ジックリセプタ-のsubtypeのうちP_<2y>リセプタ-によって媒介されること,またP_<2y>リセプタ-にリンクしたligandーgated Ca^<2+>チャンネルが存在することを示した. 3.ATPによってCa^<2+> mobolizationが起きることは,ホスホリパ-ゼC活性化・イノシト-ル3りん酸合成促進につながるP_2リセプタ-の存在を示唆している.これがP_<2y>以外のsubtypeによるのかP_<2y>の内のさらに細かいsubtypeによるかはまだ不明である. 4.ATPはPC12h細胞からのカラコ-ルアミン(ド-パミン,DO)の放出を誘起した.DO放出は分化した細胞では大部分がinfluxに由来するCa^<2+>に依存しているが、seding直後の未分化な細胞ではinfluxよりもmobilizationに由来するCa^<2+>がDO放出に大きく働いているという結果を得た. 5.EctoーATPase,ectoーkinaseについては培養液中に添加したATPの代謝速度の面から検討中である.
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