研究概要 |
細胞外液中のATPが褐色細胞腫細胞PC12に対してどのような作用を及ぼすか,またPC12細胞への神経成長因子(NGF)の作用に対してどのような効果を示すかについてPC12h細胞(PC12のサブクロ-ンの1つ)を用いて検討した。細胞のATPによる長期間(数時間以上)の処理は,必然的にATPからの代謝物質,AMP,adenosine(ADO)などの生成をともない,これらは細胞内のcyclic AMP(cAMP)レベルを上昇させるのでATPによる間接的作用としてcAMPの効果も検討しなければならなかった。 (1)NGFによる24時間処理によってPC12h細胞のGTP cyclohydrolase(GTPCH)活性増加が起きるが,細胞をdBcAMPで24時間処理した場合にもほぼ同様の増加が見られた。両者の作用ともactinomycin D,cycloheximideによって阻害されるのでRNA合成,蛋白質合成に依存していると考えられる。しかし,NGFとdBcAMPの効果は相加的であり,異なる作用機構を介して発現することが示唆された。(2)ATPはPC12hからのド-パミン(DO)の放出を誘導した。また,細胞に外来的に取り込ませたノルエピネフリン(NE)の放出も同様に誘導した。ATPによるDO,NEの放出はdibutyryl cAMP(dBcAMP)を同時に添加することでより増強された。この場合,dBcAMPのみでは放出は起こらない。(3)ATPによるDO,NE放出は細胞外液中のCa^<2+>を除去し,KC1による放出が起きない条件下においても部分的(約10%)に観察された。(4)ATPからの代謝物であるAMP,ADOは細胞内のcAMPを上昇させることを介してPC12h細胞のカテコ-ルアミン輸送にも影響を与えることが明らかとなった。
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