研究概要 |
マウス頭頂骨および臼歯の器官培養系およびマウス頭頂骨由来の骨芽細胞株であるMC_3T_3E_1細胞の培養系を用いて,ビタミンAの硬組織に対する効果を検討した。頭頂骨の器官培養において、レチノイン酸(1μM)は骨吸収を促進するのみならず骨形成を著明に抑制し、アルカリホスファタ-ゼ活性およびコラ-ゲン合成の抑制を示した。これらの結果は、生後0日令の頭頂骨を用いた際に観察されたが、生後7日令および14日令のマウスより得た頭頂骨におけるレチノイン酸の反応は異なっていた。14日令の頭頂骨においては、骨吸収の促進作用(Nーacetyl β-glucosaminidaseの培養益への遊離促進)は認められたが、アルカリホスフアタ-ゼ活性の抑制は認められなかった。7日令の頭頂骨においては、弱いアルカリホスファタ-ゼ活性の抑制作用が認められた。この結果は、レチノイン酸の骨芽細胞に対する抑制作用にその細胞の骨組織の成熟度および内部環境の変化が影響している可能性を示している。石灰化能を有しているMC_3T_3E_1細胞を10%血清およびβ-glycerophosphate(5mM)で培養した際、その細胞がsubconfluent,confluent,multi-layerおよび石灰化した状態のいずれの場合も、レチノイン酸(1μM)はそのアルカリホスファタ-ゼ活性を抑制した。この結果はレチノイン酸が石灰化能を有している骨芽細胞に対し抑制作用を有していることを示している。17日令マウス胎児より取り出した下顎第一臼歯の歯胚培養の結果は、歯胚の発育段階でレチノイン酸に対する感受性が変化し、それに伴って石灰化も影響を受けていることを示している。即ち、レチノイン酸による歯胚の石灰化抑制は、基底膜が形成されている時期にレチノイン酸を適用した際に認められた。この時期以外では、レチノイン酸の作用は認められなかった。このことより、レチノイン酸は基底膜形成を障害することにより石灰化を抑制したと考えられた。
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