研究概要 |
歯周炎には種々の病型が認められ、各病型には特異的な細菌の存在も示唆されている。このうち、Bacteroides gingivalis(Bg)は成人性歯周炎患者の歯周ポケットから高率に検出され、しかもこれらの患者のBgに対する血清IgG抗体価は多くの場合、上昇していくことが報告されている。今回、ヒト歯周炎にみられるBgに対する抗体反応の亢進がどのような抗原物質によるものかを知る目的で、本菌の主要抗原蛋白質の同定を試みた。Bgingivalis W50の全菌体超音波処理抽出物とSarkosyl処理抽出によるOater membrane proteins(OMP)をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法で展開し、ウエスタンブロット法によりニトロセルロ-ス膜上に転写した。転写された各抗原に対して、歯周疾患患者103名(軽度歯周炎30名、若年者重度歯周炎30名、成人重度歯周炎43名)と31名の健常者血清を反応させ、免疫ブロット法により主要抗原蛋白質を分析した。その結果、SDS-PAGEの蛋白質分布は超音波抽出物で24のバンドが認められ、そのうち51、32、19、17、14kDaの分子量に一致するところに強いバンドが観察された。OMPでは72、57、51、19、17kDaに主要なバンドが認められた。被検血清との免疫ブロット法により、超音波抽出物では12種の主要抗原蛋白質(14 75kDa)が認められ、そのうち46、27、14kDaの抗原蛋白質に対して、若年者および成人の重度歯周炎のグル-プは軽度歯周炎と健常者のグル-プに比べて、より頻繁に反応する抗体を有していた(46kDa:p<0.05,27,14kDa:p<0.01)。一方、OMPは6種の主要抗原蛋白質(75、57、51、46、35、19kDa)が認められた。 今後、本研究で同定されたBgingivalisの46、27、14kDaの抗原蛋白質に対する抗体反応を検索することがヒト歯周炎の病態を知る上で重要であることが示唆された。
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