研究概要 |
Actinobaccllms actinomycetemcomitansは局在型若年性歯周炎や急速進行性歯周炎の原因菌と考えられている。本菌はさまさまな組織破壊産物,例えば,ロイコトキシン,リポポリサッカライドやコラゲナ-ゼなどを放出する。加えて,A・actinomycetemcomitansは歯肉結合組織に侵入し,集落を形成することができるという報告もある。 一方,若年性歯周炎の患者は本菌の全菌体抗原や超音波破砕抗原に対して高い血清抗体価を有していることが多くの研究者により報告されている。しかしながら,少数であるが,早期発症型歯周炎の患者の中にはA・actinomyctemcomitansに対して低い血清抗体価を示すものも存在することが指摘されている。このように,抗体価に関して,相反する結果が報告されているが,その要因の1つに,A・actinomyctemcomitansが多数の抗原物質から成り立っていることがあげられる。そこで,今回,SDSーPAGEとイムノブロット法を駆使して,A・actinomyctemcomitansの主要免疫抗原の解析を行なった。供試菌はA・actinomyctemcomitansNCTC9710(serotype C)を問いた。31名の局在型若年性歯周炎患者,55名の広汎型若年性歯周炎患者および31名の健常者の各血清を実験に供した。 その結果,A・actinomyctemcomitansの超音波破砕抗原には13のメジャ-な蛋白質バンド(14ー78kDa)が認められ,そのうち,70kDa,40kDaの蛋白質抗原に対して,広汎型若年性歯周炎の患者血清は,限局型若年性歯周炎や健常者の血清に比べて,有産に強い抗体反応を示した(p<0.01)。この反応は血清の希釈度をあげてみても変らなかった。一方,29とDa抗原に対する反応は限局型若年性歯周炎において抑制されていることが認められた。本研究により,A・actinomyctemcomitansの主要免疫抗原は,70kDa,40kDa,29kDaであることが示唆された。しかし,今後の課題として,これらの抗原物質の性状や病原性との関わりについて調べる必要がある。
|