研究概要 |
口腔内に用いられる修復材は抗プラ-ク性、すなわち細菌付着に抵抗性を有することも重要な条件である。一般に、口腔内細菌の付着には、静電的相互作用、疎水的相互作用、機械的相互作用、水素結合などの非特異的結合や、レクチンなどに代表される特異的結合が存在することがよく知られているが、これらの結合力の相互依存性並びに相対的な比較などは未だ完全には解明されないものであった。そこで、口腔内細菌の付着機構をより明確にするため、ガラス表面にシランと炭素間の共有結合を利用し、均一な反応基を導入した被着体を用い、菌体の付着に関与する非特異的結合の相対的比較を行った結果、固体表面への菌体の非特異的な結合には、菌体と被着体表面の疎水性、親水性、並びに電気的性質に応じた一定の関係があることをつきとめた。一方、口腔内においては、細菌付着は常にだ液の選択的吸着の影響を受け、すなわち、だ液中に含まれるタンパクの影響を細菌付着に含めた実験系として取られる必要がある。そこで、だ液中などにその存在が確認されている数種のタンパク(Albumin.lgA,γ-Globulin,Lysozyme,α-Amylase,Collagen,Muchinなど)と対照に成人未刺激だ液を固定化ガラスに共有結合させ、口腔内で優位なStreptococcus mutansとStreptococcus sanguiosについての付着性並びにタンパク及び細菌の表面性状(疎水性、表面電荷など)を検討した結果、(1)唾液を固定した表面への菌付着は疎水的相互作用の寄与が低くなることが判明した。(2)各種タンパクの表面電荷と付着性を検討したところ、負の電荷の高いStreptococcus mutansの付着には、静電的相互作用の寄与が最も強いことが判明した。(3)Streptococcus sanguisにおいては、負の電荷を持つタンパクには、タンパクの疎水性と付着数との間に相関が認められ、疎水的相互作用の寄与も存在することが示されたが、特異的結合の関与が強いことが判明した。
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