歯根嚢胞における周囲の骨吸収を促進する因子の1つであるプロスタグランジンについて、種々な病期における変動を検索することにより、臨床的に認められる根管処置による歯根嚢胞の縮少とアラキドン酸代謝との関係を解明することを目的とした。 対象症例としては、臨床的に歯根嚢胞と診断されたもので、保存可能な歯に対しては規格サイズ法による根管充填を行った後、それぞれ一定期間を置いて摘出術を施行し、一方、保存不能な歯は摘出術時に抜歯し摘出された嚢胞を実験材料として用いた。なお、対照としては各々の症例の健康歯肉を用いた。そして摘出術施行後、初代培養を施行し、 ^3Hーアラキドン酸によるラベルを行った後、アラキドン酸代謝物を分離・定性し、その放射活性を測定した。 その結果としては、根管処置施行症例において、根管充填から嚢胞摘出までの期期が短い症例は、対照歯肉に比べてアラキドン酸代謝産物は高値を示し、一方その期間が長い症例は低値を示す傾向が認められた。その他の根管処置未施行症例において、その臨床症状に応じて、アラキドン酸代謝産物は一定していなかった。 以上のことより、適切な根管処置は嚢胞壁におけるアラキドン酸代謝に対し、抑制的に働く傾向があることが示唆された。今後、さらに種々な病期における症例にも検索を加えることにより、根尖病巣に対する歯内療法学的対応の正当性を評価したいと考える。
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