平成二年度の研究の主眼は平成元年度で開発したポケット型酸化還元電位(Eh)電極を使ってinvivoで検討することである。すなわち歯周ポケット内の酸化還元電位と細菌数又は嫌気性菌の数との関係を明らかにすることを目的として研究が遂行された。 被検者として、奥羽大学歯学部保存科を受診し、成人性歯周炎と診断された患者15名(男性13名、女性2名、37〜69歳、平均50.4歳)を選んだ。被検部位は、歯周ポケットが4mm以上であり、Loeらの歯周炎指数(GI)が2以上の部位を選択した。またコントロ-ルとして臨床的に歯周組織が健康、すなわち歯周溝が2mm以下でGIが0である成人9名(男性6名、女性3名、23〜36歳、平均年齢26.6歳)を選択した。参考の為に、若年者8名(男性4名、女性4名、平均8.6歳)も検査した。細菌学的な検査として、ペ-パ-ポイント法により、唾液におよびポケット(健常者は歯肉溝)より試料を採取した。試料は、通法により段階希釈し、ブルセラHKRS血清寒天培地に塗布後、嫌気ボックス内で7日間培養した。培養後、それぞれの平板培上に発育した総嫌気性菌(total CFu)と、B.P.B.のCFuを算定した。試料採取した部位は同時にプロ-ベ型Eh測定装置により、ポケット長と酸化還元電位(Eh)を測定した。 歯周病罹患者、健常者の歯周ポケットおよび歯肉溝のtotal CFuと、B.P.B.CFuとの相関は歯周ポケットの試料で強い相関をみた。ポケット内Ehと細菌数との間には相関はみられずむしろ、ポケットの深さに相関していた。すなわち2mmの歯周溝では180mV〜ー60mVの値を示し、4mmのポケットでは20mV〜ー100mV、6mVでは20mV〜ー150mV、8mVでは、ー50mV〜ー200mVの値を示した。
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