研究概要 |
コンポジットレジンの象牙質に対する接着性を改善するために開発されたデンチンプライマ-は,その後我々の研究により、単なる接着性改善のみならず,象牙質の知覚鈍麻作用と,皮膚および軟組織に対して,接触性の炎症をひき起こすことが明らかになった。すなわち,35%HEMAに代表されるプライマ-には,2種類の効果と,1種類の副作用が認められる。今年度の研究では,象牙質知覚鈍麻作用を,臨床的に確認するとともに,プライマ-による炎症反応を,動物の皮膚を用いて再現することを目的とした。このような検討の結果,70%を越える症例で,臨床的に象牙質知覚が消失または軽減することが明らかとなり,ラットの皮膚に反復塗布を繰り返すことにより,14日目には背部皮膚に炎症が惹起されることが確認された。この皮膚の炎症,すなわちプライマ-による接触性皮膚炎発現のメカニズムについては、依然として不明な点が多く,感作やモノマ-間の交又を考慮した,今後の研究を必要とする。この副作用を克服するためには,接着性能を低下させることなく,起炎効果の少ないモノマ-の開発が必要となる。この目的のためには,HEMAを改良したグリセリルメタクリレ-トを開発し,さらに今年度はエリスリト-ルメタクリレ-トを開発し,報告した。この2種類のモノマ-は,いずれも、従来不可能であった可視光線重合型コンポジットレジンのコントラクションギャップの形成抑制を,初めて完成させたものとして,注目される。上述した3種類のモノマ-による副作用などについては,今後,より詳細な検討が必要であることは言及するまでもないが,多価アルコ-ルとメタクリル酸のエヌテル構造を持つモノマ-には,共通してプライマ-効果が認められると推測することが可能であり,今後モノマ-の合成と検討が必要である。
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