研究概要 |
コンポジットレジンの象牙質窩壁適合性に関する材料や接着手法の改善にもかかわらず,市販のシステムの殆んどすべてを用いても,完全な適合性は得られていない。我々は,これら性能の不完全さは,スメア-層を除去するために用いられるデンチンクレンザ-から最終的に填寒されるコンポジットレジンに至る、すべてのステップで用いられる材料の性能にことごとく影響されることを明らかにしてきた。殊に、近年接着性改善のために不可欠と考えられてきたデンチンプラマ-については、1984年に報告されたGLUMA以来、この材料を中心とした改良を報告してきた。すなわち、グルタルアルデヒドとHEMAの混合水溶液であるGLUMAより、まずグルタルアルデヒドを除いても、接着性の高いデンチンボンディング材を併用することにより、接着性の低下は見られないことを明らかにし、さらに、より接着性の高いプライマ-として、グリセリルメタクリレ-トを開発し、報告した。これら2種類のプライマ-の検討の結果、メタクリル酸と多価アルコ-ルとのエステルを用いることによって、より副作用の少ないプライマ-を開発し得る可能性が示唆された。すなわち、グリセリルメタクリレ-トよりも水酸基を多く含む、エリスリト-ルメタクリレ-トを合成し、そのプライマ-効果を検討した結果、このモノマ-にも優れた性能が確認された。これらはいずれも皮膚や歯肉に対するモノマ-の為害性を減少させることを目的としているが、我々の最近の研究結果によると、HEMAに感作された術者には、グリセリルメタクリレ-トにも交叉が見られる可能性も指摘されており、今後、より多様なモノマ-の検討が必要である。しかしながら、現伏では35%グリセリルメタクリレ-トおよびエリスリト-ルメタクリレ-トによって、コンポジットレジンの象牙質窩壁適合性は、著しく改善されることが確認された。
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