研究概要 |
3種ボンディング剤のウシ象牙質面に対する静的剪断試験,および口腔内環境と類似した条件下での接着に及ぼす疲労の影響を検討した結果,ボンディング剤の測定された静的接着強さが即,接着部の疲労抵抗性には反映せず,静的接着強度が高くても,繰り返し応力により早期に接着部に破壊が生じる材料もあり,一般的な接着強さにみでボンディング剤の良否を判断するべきではないことが示唆された。 今回,コンポジットレジンのサンドイッチ修復法に用いるグラスアイオノマ-系セメント3種(裏層用:光重合型2種,充填用1種)を用い,同様の検討を加えると共に剪断接着試験,剪断接着疲労試験時に発生するAcoustic Emission(AE)を検出することにより,破壊様式の詳細な検討を行った。その結果,象牙質に対するグラスアイオノマ-の剪断接着力は,それぞれビトラボンドで1.25MPa,フジライニングLCで1.16MPa,対象として用いたフジアイオノマ-タイプIIで有意に高い3.95MPaが示されたが,3種材料とも象牙質セメントでの界面破壊を示したことが観察された。また剪断試験の応力歪み曲線ならびAE信号の発生状態から,ビトラボンド,フジアイオノマ-タイプIIにおいては,破断までほとんどAEの発生が認められず,破断直前に急激なAEの増加が認められ,脆性的破壊を示したと考えられるのに対し,フジライニングLCにおいては,破断に至るまで試料の塑性変形によると考えられるAE信号が間断なく発生し,延性的に破壊が起こったことが推察された。また,グラスアイオノマ-の象牙質への接着に対する疲労の影響については,本実験に供した材料に限り静的接着強度が強いほど,疲労に対する抵抗性が強いことが示された。これらのことから,象牙質とグラスアイオノマ-の接着に対する繰り返し応力の影響は,使用されるグラスアイオノマ-自体の物性に大きく影響されると考えられる。
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