歯内療法用材料および薬剤に対する免疫生物学的評価法を確立することを目的として覆髄材、根管充填材および根管消毒剤の組織細胞に及ぼす影響を種々の免疫生物学的実験手技を用いて検討し以下の知見を得た。覆髄材は、歯髄細胞に対する影響について検索した結果、水酸化カルシウム系およびユ-ジノ-ル系は強いPGE_2産生を示した。一方、グラスアイオノマ-系はILー1αおよびβの産生誘導を示した。また、いずれの材料もコラゲナ-ゼを産生せず逆に抑制することが示された。さらに、これらの作用は濃度依存性を示した。また、これらの覆髄材は、歯髄細胞のDNA合成能、細胞致死作用を濃度依存的に抑制することが明らかとなった。根管充填材は、歯根膜細胞に対する影響について検索した。供試材料は、現在臨床で使用されているものの中から選択した。その結果、キャナルス、NUー59およびsealapexにPGE_2産生が認められ、ILー1産生はβに対してのみアパタイトル-トシ-ラ-、NUー59およびEndoーFillに認められた。ILー1αとコラゲナ-ゼ活性はすべての材料においてほとんど認められなかった。また、すべての材料は歯根膜細胞に対してDNA合成、細胞致死作用を濃度依存的に抑制することが明らかになった。覆髄材および根管充填材の細胞傷害性は、10^<ー2>の低濃度においてほとんど検出されなかったが、PGE_2やエレ-ノなどの起炎性物質は低濃度でも産生されることが判明した。さらに、覆髄材や根管充填材の主要成分として含有されている水酸化カルシウムおよびユ-ジノ-ルの各薬剤について同様の測定を行った結果、10^<ー2>〜10^<ー8>M濃度において組織細胞から濃度依存的な起炎性物質の産生および細胞傷害性が認められた。以上のことから歯内療法用材料の組織傷害性を組織細胞に対する免疫生物学的活性の測定を行うことによって定量的に評価することが可能と考えられる。
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