研究概要 |
歯科用インプラント材料の長期間装着時の安全性を明確にするため、Ni-Ti合金3種(A,B,C)、Ti合金1種(F)を用い、合成培地中への成分金属の溶出量の測定と、合金浸漬液の発癌性について、ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞を用いた不定期DNA合成試験による検討を行った。 (1)合金成分金属の溶出量の測定:A,B,C,F各合金をミキサ-ミル、フリ-ザ-ミルを用いて粉砕して300μm以下の微粉末を作成した。合成培地イ-グルMEM2ml中に合金微粉末300mgを浸漬し、37℃、100回/分、1日3時間振盪の条件で1〜7、8〜14日の浸漬液を採取し検体とした。この検体のTi,Ni量をICP(日立P-5200)で測定した。Ti量は合金B,F1〜7日浸漬時2.2、5.6ng/ml 、合金Fの8〜14日の浸漬時6.8ng/mlであった。合金A,Cは検出限界以下であった。Ni溶出量は合金A,B,C1〜7日の浸漬で8.3、15.3、17.1μg/ml、8〜14日浸漬では13.4、9.2、9.9μg/mlであった。 (2)合金浸漬液の不定期DNA合成試験:上記の合金浸漬液に5%子牛血清を加えた試験液を用い、HeLa細胞による不定期DNA合成試験をオ-トラジオグラフィを作成し、銀粒子数を測定する方法によって行った。合金A1〜7日浸漬液を用いた群では細胞核100個の平均銀粒子数が陰性対照群4.9個/核の4.2倍に増加した。他の合金浸漬投与群では銀粒子数の有意な増加は認められなかった。 以上の結果からTi合金は体液を模擬する合成培地中での浸漬により各種成分金属の溶出がみられ、一部合金の溶出液で不定期DNA合成試験弱陽性を示すことが明らかとなり、発癌性について、より詳細な研究の必要性が明らかとなった。
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