研究概要 |
歯科用インプラント材料について、長期間装着時間題となる発癌性の有無を明らかにするため、Ti合金4種(Niti, Ti6A14V, Ti5A12.5Fe, Ti5A13Mo4Zr)を用い、アミノ酸溶液および合成培地中への組成金属の溶出量の測定とアミノ酸浸漬液の発癌性について不定期DNA合成試験(UDS)および姉妹染色分体交換試験(SCE)による検討を行った。1)合金組成金属の溶出の測定:4種の合金をミキサ-ミル,フリ-ザ-ミルを用いて粉砕して300μm以下の微粉末とし、0.1Mグルタチオン溶液(以下G液),0.1Mシステイン溶液(以下C液)または合成培地5mlに300mgを浸漬し、37^゚C、15回転/時間振盪の条件で2週間目の浸漬液を採取し、Ti, Al, V, Fe, Mo, Ni量を測定し、Moを除き、組成金属はすべて溶出していることがわかった。G液中でTi 31.6, Al 400, V 79.6pg/mg合金/日の溶出が認められた。C液中でのTi6A14V合金からの溶出量はG液の約1/5であり、合成培地中ではTiは1.5pg/合金/日であり、アミノ酸溶液に比してはるかに少なかった。2)合金アミノ酸浸漬液のHeLa細胞不定期DNA合成試験:合金のG液の15/100,C液の25/100の濃度において、用いた合金4種はUDS陰性であった。陽性対照として用いた2x10^<ー6>M 4NQO群では33.1%の陽性率であった。3)姉妹染色分体交換試験:ハムスタ-由来V79細胞によるSCE試験では、用いた合金4種の浸漬液すべてが溶媒対照に比してSCE出現率が高かった。陽性対照のEMS(800μg/ml)投与群では100%, 溶媒対照のグルタチオン, C液はそれぞれ19.4, 16.2%の細胞にSCEが存在した。4種の合金浸漬液ではTi5A13Mo4ZrのG液の15/100液において58.1%の細胞でSCEが存在したのが最も高頻度の出現であった。合金の発癌性の検討には遺伝子レベル等も加えて多用な実験系での検討が必要と思われる。
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