研究概要 |
本研究の最終年度である当該年度には,初年度において方法の確立した外側翼突筋下頭を含む咀嚼筋8chの筋電図と6自由度顎運動の同時測定を,顎機能健常者を対象に行い,デ-タの蓄積と解析を進めることと,顎関節音の記録法を確立して,従来のシステムに組み込み,顎機能診断システムとしての完成度を高める作業を行った.その結果,外側翼突筋下頭の下顎運動に果たす役割として,1)外側翼突筋下頭の活動は,顆頭の前方移動に対応して観察されその活動量は顆頭運動速度や顆頭位等の影響を受け,活動開始時期は,非常に遅い開口運動を除いて,顆頭の移動開始時期に先行するか,または一致していた.2)切歯点における側方限界運動経路に制限のあるものでは,作業側に相当する外側翼突筋下頭の活動開始時期が早い傾向にあった.などのことが分かった.顎関節雑音については,小型コンデンサ-マイクロホンをアタッチメントによって外耳道に設置することにより,6自由度顎運動と外側翼突筋を含む咀嚼筋筋電図との同時記録を可能とし,当初目標であった総合的な顎機能診断システムとしてほぼ整備された.相反性のクリッキングを有する患者の治療前とスプリント治療の経過中の測定の例では,治療前にみられたクリッキング時の顆頭運動の偏位が,スプリント治療によってクリッキングが消失すると共に滑らかな経路に変わることなどが観察された.またこの測定結果は,MRI検査による関節円板の復位の状態を示す所見と非常によく対応していた.今後本システムを用いた測定デ-タを多数蓄積して,多種多様な顎関節雑音の病態分類を行い,各々についての発症機序を明らかにしていきたい.
|